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音響励振装置(サイマティック)の
歯科臨床への応用

田村歯科医院 田村享生
日本歯科東洋医学全誌
第18巻第1号月
(1999年6月25日発行)

 

<1>緒言

 波動治療装置としては数え切れない程のものがあるが、その効果は種々さまざまであり、さらにその理論的背景が科学的に末解明であることを考え合わせればその全体像は全く末知の領域といってよいだろう。
  今回私が取り上げたのはサイマティックという音響励振装置である。これはイギリスのマナー博士により考案された装置であり、可聴音域の5種の音を装置により発生させ、その音(振動)を患部にあてることで各臓器または各機能に対し選択的に効果を期待しようとするものである。
  前述したようにその作用機序は科学的には未知の領域だが、臨床的には興味を引くものがある。
オリジナルの使用法は、アンジュレータと呼ばれる振動子を患部や下丹田などの肌に直接当てて使用するとされているが、今回は歯科診療室で使用上違和感の少ない首、肩、足首などで、経絡理論や五行理論を応用して使用してみた。

 

<2>サイマティックとは

 サイマティック療法とは、イギリスの医師であるマナー博士により考案された療法であり、日本語で表記すれば音響励振療法となる。
  音楽療法や音響療法、さらに心霊の実績をもつ臨床医だが、ある特定の音(振動数)が特定の臓器や機能に関連があることに着目し、サイマティック装置を考案した。
これはアンジュレータと呼ばれる振動子から5種類の可聴音域の音(振動)を発し、それを体の患部にあてることで治療効果を期待するものである。(写真1)
  各臓器や機能のコード数は458に及ぴ、医学的、解剖学的な領域はもちろんのこと、感情やバッチフラワー、霊的なものにまで及んでいる。
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<3>症例

1.症例1

患者:女性、51歳
主訴:歯がボロボロで噛めない。あちこちの
歯が痛くなる。歯科に対する恐怖心が強く、治療ができない。(写真2)

投与波動:
  1)Shockmental(精神ショツク)
  2)Shockphysical(肉体ショック)
  3)Ethricbody(工一テル体)
  4)Auradistortion(オーラの歪み)
  5)Auracordination(オーラ調整)
  アンジュレータにて肩井付近へ各3分ずつ

経過:今まで何件かの歯科医院を受診してきたが、恐怖心が強く、治療が途中で中断してしまう。自分でも困っているが、治療用のイスにじっと座っていることすらままならない。

 治療1回目でお話とサイマティック療法を行った。(写真3)
 2回目はサイマティックとごく簡単な除石。
  3回目はC4の抜歯を行うことができた。

 初診時の極度の緊張、あるいは前医の歯科医院で治療用椅子から逃げて帰ったという話が全く嘘のように落ち着いた状態でスムーズに治療が進んだ。
  4回目以降通常の歯科治療を行っている。状況によってサイマティック療法を併用しているが、当初の著しい不安感・恐怖感は全く影をひそめた。

 

2.症例2

患者:女性、20歳
主訴:右上1番の痛み(C3急性化膿性Per)。左右手首付近に皮膚湿疹あり。

(写真4) (写真5) (写真6)

姿勢が悪い。おどおどしてひどく落ち着きがない。

経過:中学生の頃まで当院にて矯正治療を行っていたが、ブラケットをはずした段階で未来院となり、保定装置は未装着となっている。
6年ぶりに右上1番の自発痛を主訴とし当院に来院したが、右上1番よりもむしろ手首のアトピー、姿勢不良、落ち着きのなさがとても目についた。また顕著な咬頭干渉こそなかったが、咬合の不安定も気になった。
右上1番の根管治療をすすめながら下記の治療を行った。

(1)初期治療

サイマティックの波動投与(アンジュレータによる)。

肩井付近に3分ずつ
  1)Shockmental(精神ショック)
  2)Shockphysical(肉体ショック)
  3)Neck(頸椎)
  4)Vertebrae(椎骨)
  5)Spine(背柱)

手首湿疹部へ3分ずつ
  1)Cleancells(細胞浄化)
  2)Oxygen(酵素供給)
  3)Scartissue(傷痕の治癒)
  4)Skin(皮膚)

 なお、皮膚科から処方されているステロイド軟膏は、使用を一時中止してもらう。

(2)中期治療

 サイマティックの波動投与(通電による)。
  アトピーに対し、より効果的に使用することを目的とし、皮膚をつかさどる肺経の補穴(太淵、経渠、尺沢)に対し、アンジュレータを介さず直接電気刺激を与えた。
  投与手段は、針(写真9) (写真10)、ポタン電極(写真11)、心電計に使用される皮膚電極(写真12)を使用した。

投与波動は
  1)Cleancells(細胞浄化)
  2)Oxygen(酵素供給)
  3)Scartissue(傷痕治癒)
  4)Skin(皮膚)
を使用した。各3〜5分、微弱刺激にて。

(3)後期治療

 姿勢の悪さに改善がみられてきたところで、日腔内の咬合調整を行った。顎位そのものには治療の前後で著しい変化はみられなかったが、不安定だった顎位が安定してきたことは認められた。頸肩部の筋緊張も緩和してきた。
  アトピーは完治とはいえないが改善傾向が認められた。

姿勢の悪さ、落ち着きのなさは明らかな改善がみられた。
(写真15) (写真16)

 

3.症例3

患者:女性、51歳
主訴:咬み合わせると左右顎関節が痛い。口を大きく開けられない。
経過:4〜5年前に発症し、その後大学病院や数件の歯科医院を受診し、スプリント治療などを経験しているが、一向に良くならない。
  当院受診時も不安感を伴った表情で、更年期の体の変調と相前後して発症していることが読み取れる。
  口腔内を診査しても明白な咬合不調は見当たらず、明らかなのは左右の顎関節顆頭部の圧痛、開口障害、咬合時の顎関節顆頭部の疼痛である。

(写真17) (写真18) (写真19)

 前医と類似の治療法をとっても効果は少ないと考え、スタディモデルの作成(苦痛を伴う印象採得)や、スプリントの使用は行わず下関、合谷に対する低周波通電(1Hzで20分)

(写真20)

を行った。

 サイマティックによる波動投与を行った。

波動投与
  1)ShockMental(精神ショック)
  2)ShockPhysical(肉体ショック)
  3)Neck(頸椎)
  4)Vertebrae(椎骨)
  5)Spine(背柱)

 アンジュレータにて肩井付近へ3分ずつこの治療を3回行った後(1週に1回のペース)、咬合を確認したところ、今までみつからなかった左上下5番の咬頭干渉が見つかった。
  平衡側にて左下5番の頬側咬頭と左上下5番の口蓋咬頭がロックしている。(写真21)
 同部はすでに削合が行われており、これ以上削れない状態だったので、左下5番にクラウンを作成し、干渉を除去した。

 その結果、症状は緩和し、通常の生活に支障のない状態となっている。鬱状態の精神状態も改善され、明るい表情を取り戻している。

 

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<4>考案

1.サイマティックの効果

(1)心のしこりをほぐす

 症例1、3でみられるように、心のしこり、ひっかかりを緩和し、素直で穏やかな心に誘導する働きがあるようだ。
  なかなか治らない難症状に苦労している患者さんが医師不信に陥っているような状態でも、そのかたくなな心を開いてもらう一助になるような感触を持つ。
  もちろん歯科における適切な治療方針と確かな治療技術が絶対必要な事はいうまでもないことだが、医師と患者の信頼関係を築く上で、サイマティックが1つの橋渡しになり得るものと考える。

(2)顎関節、頸椎付近の硬直した筋肉をほぐす。

 歯科的トラブル、精神的緊張などにより頸部の筋肉が硬直することはよくみられることである。
  このような、こり、硬直に対し、これらをゆるめ、こりを緩和させるのに役立つ。

(3)顎関節、頸椎関節の正常化

 前述の硬直した筋肉をほぐすということと共通したことと考えられるが、制限されていた関節の動きやその位置を正常化するようである。
  顎関節の開口障害時などで顎関節周囲の筋肉をゆるめると、開口度は向上するが、サイマティックもちょうどそんな働きをしているようだ。また頸椎2番3番付近が咬合に強い関連があるといわれているが、同部の偏位(サプラクセーション)がサイマティックにより改善される。

2.サイマティック効果の作用機序について

1)アンジュレータの振動が血行を促進する。
電動あんま器のような作用で、硬直した筋肉の血行を促進することが考えられる。

2)針やボタン電極、心電図用の端子を使用した場合は、ツボを電気的に刺激することになり、関連領域の治癒カを促進することが考えられる。

3)アンジュレータの動的刺激が関節の偏位を矯正する。
  動的刺激により関節が何らかの刺激を受けることは当然考えられるが、単純にそれだけで偏位が矯正されたとは考えづらいようにも思われる。

4)副交感神経を刺激する。
  サイマティックの刺激を受けていると不思議と眠くなる。その不思議なリズムが眠気を誘いα波優位の状態をつくり、副交感神経支配の状態になっているのかもしれない。
  そうした状態では当然イライラは減少し、心は和んでくる。体の自然治癒カも向上してくるわけで、体はより正常な状態になってくるのだろう。

5)患者さんとのポディーマインドタッチが増し、コミュニケーションも増す。
  サイマティック療法は、患者さんの心と体の癒しに通じる療法である。患者さんの心にも体にもタッチすることで、まさにポディーマインドタッチといえるだろう。患者さんの信頼を得て、信頼関係が増し、治癒効果も向上することは当然考えられる。

6)サイマティックの波動が各臓器や各機能と同調し、その働きを活性化する。
  これは開発者Dr.マナーの理論である。筆者個人としては非常に興味深く考えているが、この領域は学術的な基礎研究に乏しく、仮説が一人歩きしていることが多い。
  学術報告としてはこういう説もあるとあげるにとどめておこう。

7)上記以外の未解明の機序
  臨床的にはとてもおもしろい効果が出ていることは確かである。よくわからない他の働きもあるのかもしれない。

 
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<5>まとめ

 通常TMDなどによりさまざまな不調がみられる時、顎関節周囲筋はすでに硬直がみられ、頸椎の2番3番付近はかなりの偏位がおきている。実際に咬頭干渉などがあった場含、顎はその干渉をさけるような動きを習慣化する。さらにそうした不自然な顎運動は、周囲筋肉を硬直させ、顎運動はさらに制約される。このような状況で咬合を診査しても原因となっている咬合の不調和はなかなかみつからない。

 咬合の不調和をみつけるためには、まず正しい顎位を確認することが当然必要だが、そのためには顎関節周囲筋をゆるめ、そのためには頸椎付近の筋をゆるめ(場合によっては背柱全体の筋をゆるめ)、椎骨(頸椎)の位置を正すことが必要となる。それから顎関節を正しい位置にもっていき、ようやく本来の咬合状態を確認できるのである。

 紙上で書けば簡単だが、実際の臨床では決して簡単ではない。熱心な臨床医達はそのためのノウハウをさまざま研究しているが、サイマティックは比較的簡単にこれらのステップをたどることができる。

 もう1つサイマティックにはおもしろい特徴がある。
  私達現代人は常にさまざまなストレスを受け、心の表面は硬い殻に被われていることが多い。サイマティックの精神系のコード(波動)を投与すると、そうした殻が少しずつはがれていくような印象を持つ。多くの人は心穏やかになり素直になる。そしてとても大切な気付きを得る患者さんもいるのである。

 私達歯科医は日々歯の修理に追われるが、医の本質は修理でも修繕でもない。医とは生命の光を輝かせ、生命の喜ぴをわかちあうことである。病とはただいみきらうべきものではなく、生命の歪みを知るきっかけなのである。病とは自己の生き方の歪みを知る大切なヒントなのである。責重な気付きのヒントなのである。
  サイマティック療法を行っていると、患者さんとそんな話で盛り上がり、意気投合することがよくある。
  歯科医冥利につきる一瞬である。

 

文献
1)Goldman,J.:HealingSounds,90〜95,ELEMENT,Massachusetts,1992.
2)Meclellan,R.Phd:HealingForcesofMusic,52〜55,ELEMENT, Massachusetts,1991.
3)Brennan,B.A.:LightEmarging,112〜114,BANTAMBooks,NewYork, 1993.
4)尾澤文貞:全身咬含、日本医療センター、束京、1990.
5)中村昭二:生体および顎態からみた咬合由来症(1),日本歯科理論,533:147〜156,1989.
6)尾澤文貞:歯の咬み含わせが病気の原因だった,廣済堂,東京,1995.
7)小山悠子:歯でこんなに人生が変わる,廣済堂,東京,1994.
8)藤井佳朗:歯科からの逆襲,現代書林,東京,1997.
9)止野圭一:ヒーリングボディー,海竜社,東京,1994.
10)Andrew,W.:ナチュラルメディスン,春秋社,東京,1990.
11)山根悟:カイロプラクティック教本,医道の日本社,東京,1997.
12)山田唯勝:咬舎整体療法の基礎エンタプライズ,東京,1996.

 

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