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親知らずは抜くべきか?

 

親知らずの生える時期は個人差がある

 「親知らず」というのは、大臼歯の一番後ろにある歯で、智歯とも言われます。第三大臼歯というのが正しい名称だが、まん中から数えて8番目の歯なので、「8番の歯」ともいわれています。

 普通の永久歯(おとなの歯)が6歳〜14歳くらいで生えてくるのに対し、親知らずは順調にいっても18〜24歳くらいが萌出年齢です。
さらに遅れて生えてくることも多く、中年過ぎになって、ようやく顔を出すこともある。人によっては、一生埋まったままで生えてこない人もいます。また、この「親知らず」というのは、元からない人もいるのです。

 本来、上下左右全部で4本あるはずの「親知らず」ですが、四本全部ある人のほうが少ないのです。4本全部ある人が全体の3分の1。最初から1本もない人が3分の1。残り3分の1の人が1本〜3本の親知らずを持っています。

 このように最初から「親知らず」を持たない人がかなりいる上に、仮にあっても埋まったままの人もいます。こんな状態だから「親知らず」がまともに生えてくるほうが少なく、仮に生えてきても斜めに生えたり、横向きだったりして、何かとトラブルの原因になることが多い歯なのです。

 

トラブルとその対策

トラブル 1):
親知らずが不自然な方向、位置で生えてきたため歯肉がたびたび腫れて痛い、かめない。

対策:
患部の消毒と消炎剤の服用、歯の一部が強くあたっているときはそこを削ります。腫れや痛みがやわらいだら徹底的に磨いて清潔を保つことです。しかし磨きにくく、実際には磨くのが不可能な場所もあるので限界があります。

 

トラブル 2):
親知らずが不自然な生え方をしているために常に不潔になり、虫歯が進んでしまった。さらに手前の大切な第二大臼歯まで一緒に虫歯になってしまう。

対策:
虫歯の治療をまず考えるが、親知らずは口の一番奥にあるため、治療は困難なことが多いのです。患者自身も口を思いきり大きく開けて治療を受けなければならないので、かなりの苦痛を伴うことが多くなります。

やっとの思いで虫歯の治療が終わっても、位置的ハンディからすぐまた次の虫歯をつくることにもなりかねません。

 

トラブル 3):
傾いて生えてきたりするため、かみ合わせのじゃまをします。本人はあまり意識していなくても、かみ合う位置がずれてきて、肩コリなどを伴う咬合病になっていることがあります(10・11月号でとりあげます)。

対策:
かみ合わせのじゃまになっている部分を削ります。大きくじゃまをしている場合は削りきれません。削って、いったん事なきを得ても、またあたってくることがあるのでまた削らなければならなくなります。

やっとの思いで虫歯の治療が終わっても、位置的ハンディからすぐまた次の虫歯をつくることにもなりかねません。

 1)2)3)が親知らずの代表的トラブルだが、軽傷の場合は比較的簡単に治ります。問題はなかなか治らない場合や、再発をくり返す場合です。この場合、決め手は「抜く」ことになります。

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親知らずといえども抜かない場合

ケース 1):
親知らずが正しく生えて特に問題がない場合。

意見:
こういうこともけっこう多い。他の永久歯と同様大切に一生使いましょう。

ケース 2):
今は多少トラブルで苦労しても、将来他の歯がなくなってきたとき、立派に役立つかもしれないのでは。

意見:
その可能性はあります。大切にしましょう。

ケース 3):
神様が作った歯!!何で抜くものか!!

意見:
最も大切な考え方だと思います。

ケース4):
ただ、"抜く"ことが恐ろしい。

意見:
抜くことが患者さんにとって一番苦痛の少ない方法なのです。先生とよく相談してみましょう。

 

 では、ここで実際の例をあげて、親知らずを抜くか抜かないかの検討をしてみます。

1)三十代女性の場合

親知らず

A もとから親知らずがありません。

B、C 現在、埋まったままですが、少しずつ生えてくる可能性があります。
口の中にわずかに顔を出した程度の半萌出の状態が一番不安定で脹れやすくなりますので、今から要注意です。
  もとからブラシをあてにくい場所ですがよく気をつけて清潔に保つようにすれば、無事、何事もなく経過するでしょう。

D 横向きに埋まっています。
  将来とも生えてくる可能性はありません。しかし、ここに菌がたまって増えたりすると手前の歯に虫歯をつくったり、ひどく脹れたりすることもありますから、やはり清潔になるよう、この部の歯みがきに気をつけましょう。

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2)二十代男性の場合

親知らず

A、B 現在生える途中。半分くらい口の中に見えている。いずれ完全に生えてくるだろうが、すでに左右とも、となりの歯との間に立派な虫歯ができている。
C、D まだ半萌出の状態だが、どちらも傾いて生えてきているのでこれ以上は生えない。両方の歯とも虫歯ができているし、歯肉も脹れぎみ。

 親知らずの手前の虫歯はまず治療が必要。問題はトラブルメーカーの親知らずをどうするかです。抜くかどうか…?
  この患者さん、現代の若者の典型的な生活パターン

●夜ふかし、不規則な生活
●糖分、添加物の大量摂取
●早食い、よく噛まない

  がみられました。

 この男性の場合、20代ということもあって現在特に目に見えて健康上の問題はないようだが、多くのひずみが出はじめています。

 10代のときの虫歯はあまりないのに、ここ数年で多くの虫歯が頻発している。骨格は良好なのに敏感な口の粘膜は陰性となり脹れぎみである(これは老化が進んでいる)。20代の割に肌のツヤがなく食生活の乱れが推察できる。
今はもって生まれた健康を何とか維持しているが、このままの生活を続けていけば、成人病で苦しむ不健康な中年へと移行していくでしょう。

 これらの二つのケースからいえることは、食生活の乱れや不規則な生活に対するアドバイスは当然行いますが、それに気づくかどうかはご本人の問題なのです。
歯科医師の立場で生活の仲間で立ち入ることはできませんし、立ち入るべきではないと考えます。私達に課せられた仕事は、患者さんの正しい健康観と、健康法をアドバイスし、いのちの大切さに気づいてもらうことだと思っています。

 結局この患者さん、「気づき」があれば「親知らず」は抜かずに治療。今のままの生活なら、まっ先に「抜く」というのが必要な治療でしょう。

 

抜くか抜かないかの最終判断

 最終的には患者さんが決定することだが、次の点を考えておくと参考になると思います。
一般的にいって、抜くのが患者本人にとって一番簡単な方法です。
抜くときはさすがにイヤだし、心配なものであるが、抜けばそれで治療終了です。あとは消毒に少しの間通うだけです。
一方、抜かないで親知らずを残す場合ですが、歯の状態がよければ、迷わず残します。

 問題は歯の状況がかなり悪い場合です。このような場合、患者さんにとっても歯科医にとっても、かなり苦難の道となるでしょうが、両者の意欲と呼吸がしっかり合えば、かなりの効果が期待できます。
良心的な歯科医と意識の高い患者さんの呼吸が合えば、時には奇跡といえるほどの効果が上がります。

 ただし、この場合、私達歯科医にとって唯一気をつけなければならないことがあります。親知らずに限らず抜歯を強く拒否する人がいますが、この中にはただ単に"わがまま"なだけという人が混じっています。
「歯を抜くなんて絶対イヤ!歯科医が責任をもって、しっかり治してくれなければ困る。万が一また痛みが出たら歯医者のせいだー」という具合です。

 そうした患者の希望を受けて治療方針を決めたら、とんでもない過ちを犯すことになります。患者さんのせっかくの「気づき」のチャンスを、つぶしてしまうことになるからです。

 体のひずみ、ゆがみ、不調和にはすべて原因があります。その原因をそのままにして、表にあらわれた症状だけ治しても、また姿を変えて別の不調和が出てきます。
親知らずに限らず、体の不調和はいのちが発する信号です。この大切な信号を受けて、適切で最高の対応をしたいものです。

 

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