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歯科臨床での食養について

-食養のコツと甘い野菜スープ-

田村歯科医院 田村享生
日本歯科東洋医学全誌
第19巻第2号印刷
(2000年12月25日発行)

 

<1>緒言

 日々の歯科臨床において難治性の歯周疾患や出口のみえないTMD症候群に苦労することがある。
  なすべき処置は行っているのに期待する効果が現れない……。
  このようなとき、東洋医学的アプローチは往々にして大きな光を与えてくれる。
  その中でも食養は患者さん自身の体の力を上げ、病気に対する抵抗力もつけることができ、非常に有効な手段である。
  しかしながら、日常臨床において患者さん自身に食生活を変えていただくのは並大抵のことではない。
  通り一遍に食養のアドバイスをしても患者さんの口から出る言葉は、
「心がけておきます(でも実行する気はないワ…)」というお決まりのSoft Refuseである。
  生命に直接の影響の少ない歯科疾患で、食生活を変えていこうというのはなかなか難しいのだ。
  食養のアドバイスをするうえで最大のポイントは食養の敷居をいかに低くし、それでいて最大限の効果を引き出すにはどうしたらよいか…。
  われら歯科医師にとって食養とは意外に難しく、そして実にやりがいのある療法なのである。

 

<2>食養とは

  東洋医学の根底をなすのは1に鍼灸、2に湯液、3に養生といわれる。
この養生の大きな柱が食養生(食養)である。
食養は食事療法に似ているが、現代の栄養学、食事療法学とは根本的に異なるものである。現代栄養学が食物を栄養素という要素で分析しているのに対し、食養は陰陽五行をベースにし、食物と体のバランスを整えることを主眼とする。(図1.食物の陰陽表)
われわれが治療の対象とするカリエスや歯周病、TMDなどは、本来の体の一部(組織)がその形を緩め崩壊しているわけで、その部分が陰性化をしていることになる。
そこでそれを中庸に戻すため、陰性を中和するための陽性食を与えることになるのだ。
私たちの体に適する食は基本的に穀物菜食であるから、より陽性の傾向の強い菜食(根菜類など)を積極的に摂ることとなるのである。
これが食養の基本的考え方である。
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<3>やさしく楽しい食養(簡易式食養)

 私が患者さんにアドバイスしている食養は前述したように、できるだけ敷居を低くし日々の生活の中に簡単に取り入れることができることを主眼としている。

1.やさしく楽しい食養(1)−甘い野菜のスープ−

 病める者、困っている者の心理として、自分を救ってくれる「希望の妙薬」を強く求める傾向がある。
  既存の食養ではその妙薬が「玄米」であったり、「肉断ち」であったりする。
  しかし現実的にはそのどちらも今の人々には少々敷居が高い。
  気軽に実践できて、それでいて効果が高いという妙薬こそ、実は「甘い野菜のスープ」なのである。
  甘い野菜のスープとは久司道夫が提唱している野菜スープであり、人参、キャベツ、かぼちゃ、玉ねぎを煮込んでできる煮汁(スープ)である(表1図2)。
  この甘い野菜のスープは、五行思想で考えれば「土」に属し東西南北の中央に位置し、土用の季節に実をつけ、牌と胃をつかさどり、黄色で甘い味がする(表2)。
  根菜と、地を這う野菜から成り、陽性の強いスープなのである。
  この東洋医学的解釈をもう少し平易な言葉で表せば、体の緩みを引き締め、外敵の侵入を防ぐ体にし、牌(=血)を助け、血液の力を上げ、胃を助け、消化吸収の働きを増す。
  現代医学的、現代栄養学的にみても野菜は酵素やビタミン、ミネラルの宝庫である。さらに抗ガン作用をはじめとする抗酸化作用の強い成分もたくさん含まれている。
  例を挙げれば、βカロチン、αカロチン、ビタミンA・C・E・B群、セレン、ポリフェノール、フェノール化合物など強い抗酸化作用のある栄養素が数えきれないほど含まれているのである。
  この甘い野菜のスープを毎日飲むことで体が変わってくる。できれば1日1リットル以上飲みたいものだ。スープだか1リットル以上飲めるのだ(温野菜の状態ではそれだけの量を食べきれない)。
  お茶がわり、デザートがわりに飲めばよい。

2.やさしく楽しい食養(2)−ごはんはこんなにおいしい−

 食の基本は主食(ごはん)をしっかり食べること。
  洋食化した食生活、簡易化した調理法の中で、パン、冷凍食品、レトルトパックなどにおされて、ごはん(米)の割合はずいぶん減っている。
  ごはん、特に精米度の少ない胚芽米、分づき米、さらに未精米の玄米などは地の気をそのまま貯め込んでおり、生きた気のエネルギーに満ちている。
  栄養学的にも、玄米は炭水化物だけでなく、蛋白、ミネラルなどほとんどすべての栄養素を含み、完全栄養食品に近い。
  残念なことに一部指導家の中に「玄米は、まずいけど、体によいから、我慢して食べなさい」などという者がいる。これはとんでもない間違い指導だと筆者は考える。
  玄米は炊き方次第でおいしくもまずくもなるのである。
  食はおいしくなければいけない。特に主食は絶対においしくなければならない。玄米(または低精製米)は実際に、とてもおいしく、体も元気にしてくれる。
  こんなにすばらしいごはん、おいしく炊いて思いっきり食べよう!
  おいしく炊くコツ(図3)は、

・圧力鍋
・内鍋としての土鍋
・浄水した水(活性水)
・白炭(竹炭)
・自然塩を1つまみ

 このごはんのおいしさに気づけば朝食がパンだと悲しくなってしまう。
  よいごはんは、すばらしくおいしく、そして病気をも治してしまうのだ。

3.やさしく楽しい食養(3)−食いたい放題は体に毒。少しはガマン−

1)砂糖
  陰性食品の代表。体を緩め外敵に対する抵抗力を弱める。
  どうしてもお菓子好きの人は質と量を思い切りcheckしよう。
  お菓子やケーキは良質でよい素材のものを厳選し、少量をゆったりと楽しむようにする。添加物入りは絶対に買わない。ダラダラ食い、ドカ食い厳禁。

2)肉、動物蛋白
  人間の進化の過程をみてみれば、基本的に人間の食に向いていない。近海魚、貝などを適量(少量)摂取すれば十分だ。
  牛豚鳥などは食を楽しむための嗜好品と理解する。

3)油
  酸化した油は非常に危険。そもそも現代人は油のとりすぎ。

4)食品添加物(化学物質)
  人類の歴史100万年の中で、いまだかつて人類が経験していない多種多量の化学物質を私たちはどっさり浴びている。
  たとえばAという食品添加物は1人あたり10gまで摂取可能だったとする。厚生省も許可確認ずみだろう。
  ところがそこへBという食品添加物が加わる。さらにCが、さらにDが、さらに…、という具合に次から次へと、当初誰もが考えていなかったほど多くの化学物質が重畳的に加わっていく。
  さらに水道水中には残留塩素、トリハロメタン、空気中にも窒素化合物からダイオキシンにいたるまで、私たちの身の周りには生体にとって好ましくない化学物質があふれている。
  現代人は地球規模の生体実験の被験者になっているのだ。
  健やかないのちを好む人はせめて食品だけは汚染されていないものを選ぼう!
  スーパーマーケットに氾濫する華やかな食品群にはいつも驚かされるが、私たちの体が必要とする食品はその中にはほとんどない。
  私たちの体が本当に喜び、いのちが輝く食品をぜひとも摂りたいものだ。

 

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<4>実験

1.スープ飲用前後の血液像の観察

1)被験者

 43歳、女性、特筆すべき基礎疾患なし。

2)実験方法

 前述した簡易式食養のうち(1)の甘い野菜のスープを7日間飲用し、その前後の血液像を観察する。
  「(2)ごはんはこんなにおいしい」と「(3)少しはガマン」はゆるやかながら実践中であり、実験の前後で変化なしの同条件である。
  実験で飲用した甘い野菜のスープは、食品加工会社・知久製の「甘い野菜のスープ」である(図4
  自家製とせず知久製を使用した理由は、

・知久製のほうがコンスタントに一定の品質・濃度などを保っている。
・毎日、確実かつ容易に必要量が入手できる。
・無農薬・減農薬の野菜を使用している。
・安価である。

などによる。
  知久製の「甘い野菜のスープ」は表2のレシピを忠実に再現したもので、使用している野菜は有機栽培のものである。添加物などは一切使用していない。
  1日の飲用量は800cc以上とし、食事中その他を問わず任意に飲用するものとした。
  血液観察法は、左手示指先端から血糖測定用採血器により採血し、即座にプレパラート(スライドグラスとカバーグラス)標本を作製する。
  採血(観察)時刻は食事前の空腹時とした。
  使用顕微鏡はオリンパス光学製・位相差顕微鏡モニターシステムBX40PCTVである(図5)。

3)実験結果

(1)飲用前
  対物レンズ100倍による赤血球像である。
  本来丸く1つ1つが独立し離れているはずの赤血球であるが、連銭形成(図6)および棘状赤血球(アキャンサイト)(図7)が観察できる。
  血中に酸化物質が多く、赤血球の機能が発揮しづらい状態である。
  被験者本人は特別体調が悪いわけではないが、赤血球の状態は不完全さがみられる。

(2)飲用後図8.図9
  飲用前と同様、対物レンズ100倍による像である。
  赤血球同士のくっつき(連銭)は相当改善している。
  赤血球同士が触れ合う程度の接触状態は残っており、完全とはいえないが、図6の連銭よりはるかによい状態である。
  また、赤血球の形状もきれいな円形に近くなっている。多少の歪みは認められるものの、よりなだらかでスムースな形となっており、赤血球変形能そのものも改善してきていることがわかる。
  赤血球の状態が改善した機序については詳細にはわからないが、血漿中の過剰成分が減少し、結果的に赤血球の状態がよくなったものと考えられる。

2.オムニセンスによる波動測定

1)実験方法
  オムニセンスにより甘い野菜のスープの波動を測定する。
  オムニセンスはオムニジャパン社製の波動測定・転写装置である(図10)。
  波動の概念、定義がしっかり定まっていない現在、各波動測定は絶対的基準ではなく1つの目安と考えるべきである。しかし甘い野菜のスープは、栄養素だけでは分析しきれないエネルギーをもっており、波動測定の適応であると筆者は考え、参考データとして測定した。
  なお、今回の測定オペレーターは筆者自身である。

2)実験結果
  評価の値は0〜100で表され、50がbestバランスまたは中庸、0が最も不足あるいは鎮静化した状態、100が最も過剰あるいは亢進した状態ということになる。
  測定項目は、免疫機能、自律神経、ホルモンバランス、血液循環、陰陽バランス、ストレスの6項目である。

 比較対照として、大手メーカーの野菜(果物)ジュース2種、「KA社・野菜生活100(図11)」、「KI社・からだ想い(図12)」も測定した。
  結果は表3に記した。
  甘い野菜のスープは免疫機能、ストレスに関してやや亢進傾向があるが、対照よりかなり好ましいデータとなっている。
  また自立神経、ホルモンバランスは鎮静傾向にあることがわかる。
  興味深いのは、血液循環では甘い野菜がやや亢進気味なのに対し、対照ではかなり低下傾向がみられた。
  また陰陽バランスでは甘い野菜のスープは陽性、対照では陰性となっていた。

 

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<5>まとめ

2つの実験結果から、甘い野菜のスープは血液の状態を改善することで体が本来もっている機能を発揮しやすくさせることがわかる。
赤血球同士のくっつき(連銭)が減るということは、血漿成分中の過剰な養分が分解されているわけで、赤血球は自由に動き回りいわゆるサラサラの血液となる。
これは同時に赤血球の表面積が十分確保されることにもなり、赤血球膜の改善(=変形の減少)とあいまって、本来の赤血球機能が十分発揮されるわけだ。
また、波動測定からは、甘い野菜のスープは体の興奮を抑え、バランスを保つ方向に向けさせることがわかる。免疫機能を正常化しながら自律神経・ホルモンバランスなどを正し、静かに落ち着かせていく傾向もあることがわかる。
実際、このほのかな甘さのせいだろうか、このスープが体と心をやすらがせてくれる鎮静作用があることは、臨床上感ずるところでもある。

 

<6>最後に

毎日多くの患者さんを観察させていただいていると、疾病に対してきわめて抵抗力のある人から逆にとても弱い人までいる。
その幅の広さには改めて驚かされるほどである。
不摂生をくり返しながらも病気にはあまり縁がなく、健康とは「当然何の苦労もなくタダで得ることができる」と信ずる人もいる。
片や、食はもちろん生活全般に強く留意しているにもかかわらず、病気をくり返す人もいる。
現代医学的に捉えれば、遺伝子で決定される先天的要素と食その他で決まる後天的要素。この2要素のうち先天的要素の幅の広さを再確認することになるわけだ。
臨床家になりたてのころの私は、この生まれつきの不公平を、冷徹な自然界の当然の不公平…得する立場と損する立場があり、損する人はかわいそうだけど仕方ないナ…という程度の理解だった。
ところが、実態のほとんどはその逆であった。
病気の苦労を知らぬ者と病気を知る者の心の幅の違い。「いのち」を「タダ」と思ってる人と「いのち」の重さが身にしみてる者の違い。
与えられたいのちをどれだけ大切に有意義に過ごせるか…。これは楽してやりたい放題の中からは決して生まれてこない。
「甘い野菜のスープ」は実は飽食と過食に害されている私たちに示された、まさに「いやしのスープ」といってよいだろう。
華やかな食物に囲まれ、邪食に浸っているときは「甘い野菜のスープ」は味のないまずい汁としか感じないかもしれない。
しかし、本来のごはん中心の素朴な食に戻してみると「甘い野菜のスープ」はとてもとても甘く、深い味わいのあることがわかってくる。
食後のデザートとしての1杯の甘い野菜スープが楽しみになってくる。
同時に、この甘い野菜のスープを多飲することで、逆にごはんや野菜の本来のおいしさを改めて感じやすくなることも確かだ。
食べたいものを食べたいだけ食べ、もっと美味に!もっと刺激的に!もっとたらふく!などという現代の食生活からちょっと一歩引いてみよう。
飽食と過食のやりたい放題の世界から、素朴な食のよろこび!しみじみとゆったり味わえる食と健康!それを味わうきっかけづくりが甘い野菜のスープだろう。

 


参考文献
1)森下宗司:東洋医学入門、谷口書店、東京、1992
2)久司道夫:マクロビオティック自然療法、日貿出版社、東京、1999
3)日本CI協会、正食協会編:マクロビオティックガイドブック、28〜29、新泉社東京、1997。
4)三輪史朗、渡辺陽之助:血液細胞アトラス、文光堂、東京、1990
5)田村享生:強度の顎関節症状および関連症状が食養と外気功により緩解した症例とその評価、日本歯科東洋医学会誌、15(1):12〜17、1996
6)田村享生:赤血球形状と食養、日本歯科東洋医学会誌、17(2):145〜153、1998
7)田村享生:頸肩腕症候群症例における咬合と食養の関連、全身咬合、4:46〜53、1998
8)亀山敦史、野呂明夫、槇石武美、平井義人、富澤 勇、関山佳子、小島将司、福岡博史、小山悠子、福岡 明:磁気波動共鳴分析器「MIRS」による歯科材料の波動計測−第1報、日本歯科東洋医学会誌、18(2):127〜138、1999
9)関山佳子、亀山敦史、野呂明夫、槇石武美、平井義人、富澤 勇、小島将司、福岡博史、小山悠子、福岡 明:磁気波動共鳴分析器「MIRS」による歯科材料の波動計測−第2報、日本歯科東洋医学会誌、18(2):139〜145、1999

 

 

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