本症例について改めて考えてみよう(表7)。

症例1も症例2も頸骨腕部からTMJにかけての症状をもち、現代歯科医学的アプローチとしてはまず咬合の不調和を探すことから始めるだろう。
明らかな咬頭干渉や偏側低位などがある場合などは原因も解りやすく、まさに歯科医の得意とする咬合再構築とか口腔リハビリテーションといわれる仕事に専念すればよい。
しかしながら実際には明らかな原因を特定できることはむしろ少なく、まずは咬合挙上スプリントなどをいれ微妙な咬合調整を繰り返すことになる。
今回の2症例では咬合調整は最後の手段と考え食養と外気功を主たる治療法と考えた。
その理由は顕著な咬合異常や咬合崩壊がないことが明らかだったこと、患者さん自身が食養に対し比較的積極的だったことなどである。
症例2では患者さんの居住地が遠方で来院が困難だったことも食養・外気功を優先させた理由の一つである。
わずか2症例の検討であるので、これらから咬合の関連やあるいは食養の効果の臓器特異性などを述べるのは不適切であろう。
しかし、ここで臨床上強く感ずることとして図12に示した人の体の許容力が、明らかに大きくなっていることである。
体に負担としてかかってきている各ストレスは基本的に変わっていないのに、受け手である体の方がそれらを許容し、症状は消えてしまうのである。
厳格な食養などを実践してみると、この傾向ははっきりと目にみえてくるが、症例1のように簡易式食養だけでも臨床的に効果を実感できるものも多い。
われわれ歯科医は口腔内の処置を行うに際し、患者本来の正しい咬合状態を維持できるよう最大限の努力をすべきことは当然のことだが一方で、多少咬合が乱れようともビクともしない体になるよう患者自身の体を誘導していく努力をしてもよいと考える。
(1)平成7年6月6日
右顎関節痛、開口障害を主訴として来院。brushing指導、食養指導、外気功を行う。スプリントについて説明し経過を見て作製するかどうかを検討する。
(2)6月12日
brushing指導(イメージ療法)、食養指導、外気功、カリエス処置(7)を行う。
(3)6月16日
初診わずか10日だが症状の緩和がみられる。スプリントなどの咬合治療は行わず、体の変化に注目する。
(4)6月20日
食養、イメージ療法説明、外気功および経皮通電を行う。
(5)6月26日
前回と同処置。
頭頚部の症状が明らかに軽減していることが自覚できる。1日3回常用していた鎮痛剤が1日1回あるかどうかに回復してきている。顎関節の疼痛および雑音は日常ほとんど気にならない状態となっている。以後治療間隔を開けていく。
(6)7月12日
食養確認、外気功、猛暑による夏バテあるが症状緩和中。
(7)8月11日
全身に及ぶ症状改善がみられる。まだ初診から2ヵ月であり、今後十分な経過観察が必要であるが、10年来の頭頚部痛、顎関節雑音が短期間に緩和してきていることに患者自身も驚いている様子。
(8)9月14日
3ヵ月間の体調の改善に自分でも自信がついた様子である。
食養とイメージ療法も身についてきている。今後は自己管理を主とし、治療終了とする。
|