ものを食べたりしゃべったりすることはもちろんですが、歯は「見た目」でも、必要不可欠なものです。
しかし、もう一つ極めて重要な働きがあるのです。それは上あごと下あごの位置をきっちり安定させ、首や肩のバランスを整えることです。これは体全体の調子を整えるのにとても重要な機能なのです。
逆の言い方をすれば、歯のかみ合わせが狂い、あごの位置が不自然になってくると、体全体の不調和が起きやすくなってくるのです。むし歯をそのままにほうっておいたり歯が抜けたままで放置したりしていると、周囲の歯の位置が変わってきて、かみ合わせも狂ってきます。
体をまっすぐな状態にしリラックスし、自然にゆっくり上下のあごを閉じてみましょう。このとき上下のあご(歯)全体が同時にピタッと触れ合うのが理想ですが、人によっては一カ所だけが当たってしまい、全体の安定が悪い人がいます。また、歯をずらす時、不自然な滑り方をしてあごに異常な負担をかける人もいます。
このような状態は本人にはあまり自覚されませんが、長く続くとあごは常に不自然な動きを強いられることになり、それが体全体に悪い影響を与えることになります。
あごが開きにくくなったり音がしたり、首や肩が痛くなるような症状ばかりか、背中・腰の痛み、不眠・不安感・イライラ感や、さらには婦人科系の不調和などを引き起こすこともあります。
これら全身に及ぶ不調和(不定愁訴)は、かみ合わせが誘因となり、自律神経の不調和や日常の生活習慣とも重なって、複雑な症状を表すことになるのです。
口の中の不調を放置してひどくならないうちに歯科を受診し、安定したかみ合わせで、おいしく食べられる状態をいつまでも保ちたいものです。
(歯科医・田村享生)
2005年9月27日付 中日新聞 「診察室から」に掲載 |